シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 本当はちゃんと約束をしたかった。ママのお友達と三人で遊びに行こうって。

 でも、四歳の颯太は時々もの凄く反発する。普段から我慢をさせている反動もあるのかもしれないが、四歳の壁と呼ばれる成長段階もあるのだろう。

 私と二人きりで遊ぶのが常なので、たとえ顔見知りのお兄ちゃんであっても「嫌だ」と急にへそを曲げるような気がした。

 ここまでを想定し、それでも仲良くなって欲しいと思うのは、完全なる私のエゴだ。

 颯太に鳴海くんの良いところを知って貰いたい。元々純粋で素直な子だから、私の行いさえ間違えなければ大丈夫だ。

「あっ! ママっ! あれ、たまてばこの……」

「え?」

 キッズパークで受付をするために並んでいると、颯太が鳴海くんに気付いて指を差す。良心は痛むが、それに白々しく応対した。

「あっ、ほら。ジンくんだよ? ジンくん!」

「えっ、あ! 本当だねー?」

 鳴海くんが私と颯太に気付いた振りをして、歩み寄って来る。私のお願いで演技をさせているのも申し訳ない。

「颯太くん、沙耶さん、こんにちは?」

 そう言って鳴海くんは、ニコッと笑みを浮かべた。

「颯太くん、ここでママと遊ぶの?」

「うんっ! 三十分だったら良いってママが言ってくれたから」

 鳴海くんが、目線を合わせた颯太から、フッと私を見上げる。私はコクンと小さく頷いた。

「颯太くんが良かったら、なんだけど。お兄ちゃんも一緒に遊んで良いかな?」

 颯太はキョトンとした後、首を傾げ、私を見た。

「うん、ママは良いよ?」

 笑顔で答えると、颯太は丸い瞳を三日月型に細めた。

「うん、いいよ! 一緒に遊ぼう、ジンくん!」

 私は勿論そうだが、鳴海くんは目を丸くし驚いていた。まさか名前を呼んでくれるとは思わなかったのだろう。

 初対面があのエレベーターの中で良かったな、と心底思った。既に顔見知りで近所に住むお兄ちゃんだからこそ、颯太にとっても彼を受け入れやすいんだ。

 私は受付を済ませ、颯太と鳴海くんと一緒に、キッズパークに入った。

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