シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ママ? どうしたの? そんなにギュッてしたら、カエルさん苦しそうだよ?」

「……えっ、あ!」

 自分の手を見ると、颯太のビニール製のカエル人形を両手で握り締めていた。

「ご、ごめんね。颯ちゃん。ママちょっと考え事してて……」

「ふぅん? 変なママー」

 その後、颯太と十まで数えてから浴室を出た。

 母と晩御飯の支度をして、いつも通り夕食を済ませる。早くからお酒を飲んでいた父が、いの一番に寝室へ行き、私も颯太を寝かせに二階へ上がる。

 寝んね系の絵本を読み、無邪気な寝顔を確認してから部屋を出た。リビングに降りると、丁度後片付けを済ませた母がキッチンに立っていた。

 ーーどうしよう。鳴海くんの事、話した方が良いかな?

 ソファーにも座らず、突っ立ったままで母を見ていると、どうしたの、と尋ねられた。

「……えっ?」

 驚いた拍子に、頬がぎこちなく強張った。そのままソファーに腰を下ろす。

「沙耶、最近ぼんやりしてる事が多くなったけど…何か言いたい事が有ったら、言ってくれて良いのよ?」

 そう言って冷蔵庫を開け、母は梅酒の瓶と氷の入ったグラスを二つ、お盆に乗せて運んでくれる。

「たまには良いんじゃない?」

 透き通った黄金色(こがねいろ)のアルコールを注がれ、私はグラスを受け取った。
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