シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 白のカッターシャツと黒のパンツスタイルに着替え、黒いエプロンを身に付ける。

 時計の針が九時五分前になり、祥子さんが購買部のシャッターを上げた。ボタン一つで自動に上がるシャッターを見上げていると、一階辺りで何人かの話し声が聞こえた。

 ミシン糸の並んだキャスター付きの棚を三つ、定位置へ移動させる。するとぞくぞくと学生達が階段を降りて来た。

「あ、新入りのお姉さんがいるー」

 男女共に、何人かに同じ事を言われて愛想笑いを貼り付ける。

 みんなテンションが若い。学生って良いなぁとほんわかした気持ちになった。

 服飾の専門学校なだけあって、誰も彼もが個性的な格好をしている。お洒落上達者の子もいれば、ブランド品で固めた子もいる。

 大体の子が頭を茶色に染めていて、中にはピンクや緑にしている子もいた。何と言うか、奇抜な子が多い。

 学生達の多くは丸めて輪ゴムで留めた模造紙や、トワールという名前の仮布を買って行った。

 まだ仕事に不慣れなので、販売の全般を祥子さんに任せる形になってしまう。これから追々、覚えていかなければいけない。

 学生達のレジは全て手打ちで、バーコードなどを通さない。お釣り計算も暗算で、お金を貰ったらすぐにお釣りを返せないと時間内に捌き切れないらしい。そのため、よく売れる商品の値段は暗記が必要とされる。

 私は店に並んだ商品と値段を順にメモしていた。

 すると、二人組の男の子が笑い声を上げながら、購買部に立ち寄った。
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