シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ありゃりゃ、颯ちゃん大丈夫?」

 上のトレーナーからズボンまでお茶でぐっしょりと濡れていて、颯太が力なく俯いた。

 ーーやっぱり元気が無い。人混みだったし、きっと全力で遊んで疲れたんだ。

 颯太は四歳だけど、日によってはまだお昼寝をする。だから今日みたいに疲れた日は、そろそろ寝かせてあげないと体力がもたないのだ。

「向こうにお手洗いあったから、一緒に着替えに行こう?」

「……うん」

 着替え袋を持ち、鳴海くんに「待っててね?」と言付けて颯太の手を引いた。

 トイレに置かれたベッドの上で、着てきた洋服を一式着替えさせると、颯太がボソッと呟いた。

「ぼく、もう帰りたい」

「……そっか。うん、そうだね。チケット分は遊び尽くしたし、ご飯食べたら帰ろうか?」

「……うん」

 お手洗いから戻り、私は鳴海くんにお昼を食べたら帰る事にしようと伝えた。

「ごめんね、早いかもしれないけど……颯ちゃん疲れたみたいで」

「いや、俺は全然大丈夫ですよ? 充分楽しかったんで」

 ーーあれ。何で敬語……?

 そこでふと疑問に思うが、あっ、と別の事に気が付いた。

 そう言えば今日、ずっとタメで話してた気がする。

 私は別にそれでも良いのにな……。

 何となく寂しくなって、チクンと針で刺されたような気持ちになった。

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