シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「鳴海く、」

 てっきり彼かと思って振り返るが、そこに居たのは二十代そこそこの見知らぬ男の子だった。雰囲気から言えば、購買に来る学生たちみたいだ。

「お姉さん、一人?」

「えぇ、と。あの……?」

「あ、いや。別に怪しいもんじゃないっスよ? ただちょっと、あまりにもタイプだったもんだから声かけたくなって」

 ーーは? タイプ? もしかして、ナンパ……って事?

「あの、ごめんなさい。今ちょっと取り込んでて」

「え、ちょっとだけでも話す時間ない感じ?」

「そうです、それじゃあ!」

 ナンパの彼に背を向けて走り出そうとした所で、グイッと右腕を掴まれた。

 ーーえっ??

「ちょっと待ってお姉さんっ。困ってるなら何か手伝うよ? どうしたの?」

「あの、私一人で大丈夫ですっ、ごめんなさい、本当に急いでるんで離して下さい!」

「もしかして人探し? それだったら俺も協力するから」

 ーーなんなの、この人。何でこんなにしつこいの?

「大丈夫なんで、お願いです、離して下さいっ」

 そう言ったところで、掴まれていた右腕を無理やり誰かが引き離した。

「えっ、あっ!」

 ーー鳴海くんっ!

「悪いけど、執拗なナンパはお断りだから」

「あ。あぁー、なんだ。探してたのって彼氏? なんだ、ごめんねー?」

「……いえ」
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