シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか？

　ナンパの彼は柏手で謝ると、そそくさと背を向け、立ち去った。

「沙耶さん、大丈夫？　って言うか、まだメール見てないよね？　颯太くんは？」

　ーーえ？

「あのっ、鳴海くん！　颯太がっ、颯太が急にいなくなったのっ！」

「え。えぇ！？　急にって、何で！？」

「分かんないっ、私が目を離した隙にコンビニから出て行ってどこかに走り出しちゃって……っ」

　心配と不安でどうしていいか分からず、次第に目頭が熱くなって涙がこぼれ落ちる。私は思わず鳴海くんに抱き付いた。

「沙耶さ、」

「わ、私のせいだっ。私が颯太から目を離したからっ、ちゃんと手を握ってなかったからっ」

「沙耶さん、ひとまず落ち着いてっ。颯太くん、ちゃんと見つかるから！」

　言いながら彼は私の肩に手を置いて、ジッと目を合わせた。吸い込まれそうなグレーの瞳を見つめている内に、動揺した気持ちも徐々に落ち着きを取り戻す。

「とにかく、居なくなった時の状況を詳しく教えてくれる？」

「うん、うんっ。あのね…っ」

　コンビニで、と言いかけた所で、「ママッ！」と背後から颯太らしき怒鳴り声が聞こえた。

　反射的に振り返り、あっ、と息を飲み込んだ。

「颯太っ！」