シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「……ほ、本当に?」

 それまで顔を覆っていた両手を恐る恐る下げて、颯太は不安そうな瞳で鳴海くんを見つめた。

「うん、本当だよ。約束する。だから安心して良いよ?」

「……うっ、うん…っ」

 鳴海くんの笑みに安心し、颯太が鼻を啜り、大きく頷いた。

「お兄ちゃんもそうだけど。ママもさ、颯太くんの気持ちが一番大事だと思ってるから。何も我慢しなくて良いんだよ?
 これからも普段通り、ママにいっぱい甘えて笑ってて欲しい。颯太くんが笑ってくれたらママも幸せなんだよ?」

「うん」

 颯太は小さな手で涙を拭い、ようやく私の元へ駆けて来た。

「ママ、ごめんなさい」

 そう言ってギュッと抱き付かれる。

「う、ううん。ママも大きな声で怒ったりして、ごめんなさい」

 その場にしゃがみ込み、いつもそうしているようにギュッと颯太を抱き締める。

 鳴海くんは立ち上がり、私たちを見て穏やかに笑った。

「それじゃあ、沙耶さん。今日はありがとうございました」

「……え」

「お弁当も凄く美味しかったです。また学校で?」

 スッと右手を上げて、鳴海くんは躊躇(ちゅうちょ)なく踵を返した。そのまま歩き出し、ホームに続くエスカレーターを昇って行く。

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