シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「まぁ……。全然平気って言ったら嘘になるけど。颯太くんの気持ちを考えたらねー。俺のショックなんてミジンコ並みだし」

 ーーミジンコって。

 苦笑する鳴海くんにつられて笑い、エスカレーターでホームへ昇る。

「まぁ、一歩ずつって言うか。ちょっとずつ、時間を掛けるしか無いんじゃないかな? ママに自分以外に大切な人が居るって……あの年齢で理解させるなんて、それこそ大人のエゴだし」

「……そうだよね」

 まだ若いのに、鳴海くんは颯太の気持ちをちゃんと理解しようとしている。

 だからこそ、より一層愛情を深めてしまう。

 ホームに並んで立った時、鳴海くんのすらりとした手が視界に入り、触れたくて右手を重ねる。

 すると、パッと手を引っこ抜かれた。

 ーーえ。

 振り払われた右手が行き場を失い、躊躇する。

「……あ。ごめん」

「え…?」

 私は右手で空気を掴み、小さく首を傾げた。

「その……。沙耶さんに触らないって、颯太くんと約束したから」

 鳴海くんは私から目を逸らし、俯いた。

「約束って……、でも、それは。颯太の前でだけ、スキンシップをしなければいいって事じゃないの?」

「いや、それはちょっと都合良すぎるって言うか。約束を守る事にならないし、颯太くんに良いって思って貰えるまで……俺、沙耶さんに触らないつもりだから」

「……そんな」

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