シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「あ、いや。だからって、沙耶さんに対しての気持ちが変わった訳じゃないよ? 今でも凄い好きだし、颯太くんの事も好きだよ。だから、颯太くんとの約束をいい加減にしたく無いって言うか……」

 そこで一度言葉を噤み、鳴海くんは私をジッと見つめた。

「誠実であるか無いかって。そういうの、子供はすぐに見破るよ?」

「……そ。そっか……」

 力なく、そう呟くのが精一杯だった。

 あの日、駅構内で颯太と約束をする鳴海くんを思い出し、一抹の不安が過ぎったのは確かだけど。

 まさか、本当の意味で私に”触らない“事になるとは思いもしなかった。

 お互いに気まずいまま電車に乗り込み、一駅先でホームに降り立つ。

「……それじゃあ俺、先に行ってるから。お弁当、ありがとう!」

「あ、鳴海く、」

 ーーまた先に行っちゃうの?

 たったひとことも言えないまま、彼の走る後ろ姿を見送る羽目になった。

 *

「それから……。毎日の通勤がそんな感じになって。手も繋げないなんて、寂しいなって私の方が思うようになって」

 ひと通り話し終えると、祥子さんはゲ、と顔をしかめて言った。

「……何て言うか。クソ真面目だね、仁くん」

「はい。そう、ですね……」
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