シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「沙耶、どうしたの?」

「え……っ??」

 びっくりして顔を上げると、母が父のグラスをシンクに下げていた。

「何か難しそうな顔してたけど……」

「例の彼?」と父に聞こえないよう、母は声を潜めた。

「え、あぁ。うん、ちょっと。別に大した事じゃないんだけど。 明日とあさって学校休むって言ってるからどうしたのかなって」

「そう。……病気、じゃ無いのよね?」

「うん。あ、でもね。メールで理由聞いてるとこだから、大丈夫だよ。
 颯太寝たし、私もそろそろ二階(うえ)上がるね?」

 言いながら椅子を立つと、母は穏やかに微笑み、「あんまり気負わずにね?」と背中をポンと撫でてくれた。

 *

 メッセージの返事が届いたのは、翌朝、通勤電車に乗った時だった。

 アプリの通知音が鳴り、慌ててスマートフォンを確認する。

【おはよう、沙耶さん。ごめんね、まだ】

「……」

 ーーん? んん??

 ”ごめんね、まだ”……って、なに??

 明らかに打っている途中で間違って送ったメッセージだと分かる。とりあえず、続きが届くかもしれないと思ってそのまま待ってみる。

 けれど、結局のところ、学校に着いてもその続きは届かなかった。
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