シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか？

２．私がシングルマザーになったのは

　私には結婚歴が無い。それなのに、息子の颯太がいる。

　二十歳の時だった。当時交際していた五つ年上の彼氏との間に颯太が出来た。

　勿論、戸惑いは有った。まだ大学生だった私が母親になるなんて早すぎる、と。でも、正直あの時は後先の事など真剣には考えられず、舞い上がる気持ちの方が断然上回っていた。

　私は彼氏の事を心底愛していた。もしかしたら、この妊娠を機に彼と結婚できるかもしれないと心を躍らせた。

　純白のウエディングドレスを着て、バージンロードを歩く妄想までもが頭の中を埋め尽くした。


　視界に白い封筒が映った。

「何これ？」

　彼氏の部屋にあるお洒落なローテーブルに、白い銀行の封筒がポンと置かれている。私はテーブルの前に正座をしたまま、その封筒をジッと見ていた。

　私の向かいに胡座をかいた彼に視線を送ると、彼は面倒くさそうに眉を寄せ、私から目を逸らした。

「堕ろしてくれない？」

「……え」

「妊娠初期なら、堕胎も楽だろうし。金なら用意したから」

「え」

　私は再度、机上の封筒に目を落とした。

　ぎこちなく頬が強張り、やがて視界がゆらゆらと霞んだ。