シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
『うわ、マジでごめん。返事書く時急いでて、駆け込み乗車になっちゃって』

「駆け込み乗車は駄目だよ」

『うん。電車乗ってからゆっくり返事書いてたんだけど、充電切れちゃって。それで忘れてて、ごめんなさい』

「う、ううん」

 ーーて言うか。澤野くんの答えそのまんま?

 何となくおかしくなって、ふふっと声に出して笑っていた。

『あれ? 沙耶さん笑ってる?』

「うん、ごめんね。なんか想像したらおかしくなって」

『酷いなぁ〜、も〜』

 電話の向こうでむくれる彼をも想像し、私はまた笑った。

「あ。それで、用件なんだけど。その……家の用事って何だろうって。やっぱり気になっちゃって」

『あぁ〜、うん……』

「聞いても大丈夫、かな?」

 そこで鳴海くんが口ごもるので、途端に心細くなる。

『……うん。その、ちょっと複雑なんだけど……。俺、今から母さんと、母さんの彼氏に会うんだよ』

「……え?」

『今から一緒に食事する約束してて。
 沙耶さんや颯太くんの事があって、やっと決心がついたって言うか……。
 まぁ、詳しい事はまた帰ってから話すから』

「え…」

『ごめんね、もう時間だから』

 そう言った彼の後ろで、「仁、来たわよ」とお母さんらしき人の声が聞こえた。

 プツッと回線が途切れ、スマホは元の待ち受け画面に戻る。

 ーーお母さんの、彼氏? 何それ……。

 私の予想のはるか彼方にある”家庭の事情“を思い、私は暫くその場を動けずにいた。

 ***

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