シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 窓から空を見上げ、晴れている事を確認し、私は颯太に目を向けた。リビングの片隅に飾ったばかりのツリーのそばで、颯太は父と一緒にブロック遊びをしている。

 キッチンで昼食の準備に勤しむ母に近付き、冷蔵庫を開けた。

「……お母さん、牛乳ってこれだけ?」

「あ、沙耶。そうなのよ、昨日買って来るの忘れちゃって」

「そっか。コンビニで良かったら、私買って来ようか? 颯ちゃん、お父さんと遊んでるし」

 内心、ドキドキしながらツリーの方を指差すと、母はその様子を一瞥し、「じゃあお願いしようかしら」と言って、また包丁を動かした。

 遊びに夢中な颯太に気付かれないよう、慌ててダウンコートを着て玄関を開ける。

 子持ちの私が、子供に黙って家を出ると何か悪い事をしている気分になる。

 鞄の中の財布を見てから、彼が住むアパートに足を向けた。

 ーー鳴海くん。どうしてるのかな? まだ寝てる?

 アパートの下にある郵便ポストへ近付き、彼の部屋番号を知ろうとするが、苗字を記した部屋はひとつも無い。

 ーー確か、ここの二階に住んでるって言ってたよね。何号室なんだろう……?

 とにかく外へ出て来たのだから、一度電話を掛けて確認しようと思い、コートのポケットに手を突っ込む。

 そうしたところで、あっ、と顔をしかめた。

 ーーそうだ。携帯は充電器に繋いだままだった。
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