シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 鳴海くんはきっと、私以上に颯太の心を大事にしてくれている。颯太と交わした約束を何が何でも守ろうとしてくれている。

 私だったらそこまで律儀に守らなくても、と思うところを、鳴海くんは敢えて守ってくれている。だからかもしれない。

 二人だけの時間を沢山持てば持つほど、私たちは我慢しなきゃいけない。本当は手を繋ぎたい、キスだってしたいその気持ちを、押し留めないといけない。

 彼のアパートまで並んで歩いていると、不意に遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。

「あっ! ママ、いたぁーっ!」

 ーーえ?

 見ると実家の門扉付近で、黄緑色のジャンバーを着た颯太が小さな指先を私に向けて叫んでいた。

「……颯太」

 程なくして、颯太の後ろに母がいる事に気付き、僅かに狼狽えた。口実を作って彼氏に会いに行った自分に後ろめたさが募る。

 ーーそうか。私の帰りが遅いから、きっと外で待っていようって話になったんだ。

「……もしかして、沙耶さんのお母さん?」

 隣りに立つ鳴海くんがポツリと呟く。私は彼を見て、曖昧に頷いた。

「ママっ、遅いよー!」

 鳴海くんの隣りで足の固まった私にしびれを切らし、颯太が駆けてくる。それに倣って母も笑顔で距離をつめ、私の彼氏に会釈をする。
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