シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「どうも〜、はじめまして。沙耶の母です」

 母が自己紹介をした時、颯太が脚に絡みついた。私に隠れるような形で鳴海くんをそっと見ていた。

「あ、ここのアパートに住んでる、その。……鳴海仁といいます。はじめまして」

 鳴海くんは控えめに首元を触り、母にお辞儀をした。

「あら。鳴海、仁くんっていうの? じゃあ、颯太の話に出てたジンくんは…」

 あなた? と言いたげに母は鳴海くんを手で指し示した。

「……え、あ」

「うん、そうだよ。鳴海くん、私が働いてる専門学校の生徒さんで……颯太とも何度か遊んでもらったの」

「まぁ、そうなの? このお兄ちゃんに仲良くしてもらってたのねぇ〜、颯ちゃん?」

 未だに私の脚にぴったりとくっ付いたまま動かない颯太を、母が笑みをたたえて覗き込んだ。

「優しそうなお兄ちゃんじゃない? あんまりドジな感じには……見えないけど?」

 そう言って母が鳴海くんを見ると、彼は照れくさそうに頬を緩め、首を傾げていた。

「……ちがうもん、ジンくん、ドジだもん。ボールの当てあいっこしたときも、ぼくの勝ちだったもん」

「あらあら、そうなの?」

 言葉を紡ぎはじめると、私の脚を掴んでいた颯太の手が緩まり、颯太は母を見上げて口を尖らせていた。
< 179 / 430 >

この作品をシェア

pagetop