シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「なんで……?」

 ポタリ、と。涙が頬を伝って顎から滴り落ちた。

「何でって。別にお前と結婚する気なんか無いし。子供なんて正直困るんだよな」

 そう言って深々と溜め息までつかれた。

 ーー結婚する気無いってどういう事?

 ベッドの中で、私の事好きだって、愛してるって言ってたのに、あれは全部嘘だったの?

 大体、そういう事したら子供ができるのなんて当たり前じゃない。一般常識じゃない。保健体育で習ったでしょ?

 私は無言で涙を流しながら、沢山の文句を喉の奥に留まらせた。次々と湧き上がる彼への不満を涙とともに飲み込んだ。

「…….わかった」

 そう言って、手の甲で涙を拭い、私は封筒を手に立ち上がった。

「それと。もうこのまま別れるので良いよな? また妊娠したら面倒だし、沙耶だって嫌だろ?」

 部屋を出る間際、彼氏の冷たい言葉を背に浴びた。

 ーー何それ。私の事、まるで物みたいにポイって捨てるんだ……。

 そんなの、こっちだって願い下げだ。

「それで良いよ。私だって、もう二度と会いたくないし」

 あんなに好きだった気持ちが嘘みたいに急激に冷えていった。ここまで薄情な人だとは思わなかった。

 彼氏は「あっそ」と吐き捨て、私に背を向けた。

 封筒に入ったお金を手に、自宅に帰り、その時初めて母に妊娠の事実を打ち明けた。
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