シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
15.移り変わる心境

 うっかりしていた。鳴海くんが実家から戻り、会った日曜日から十日が過ぎた今朝、急にあの事を思い出した。

 そもそも、鳴海くんに会ったら真っ先に詳しい事情を聞きたいと思っていたのに、別の悩みに脳が支配され、すっかり忘れていた。

 鳴海くんが電話口で手短かに話した家庭の事情。"お母さんの彼氏に会う"、その理由で実家に帰っていたのに、詳細はまだ知らされていなかった。

 朝の通勤時間、彼とホームに並んで電車を待っている今に、私は「あの」と言って切り出そうとした。

「あ。そう言えばさ?」

「え。あ、うん?」

 私の言葉より少し早く、鳴海くんが思い出したように言った。

「クリスマス、どうなったのかなって」

「え…」

 ホームに冷たい風が吹きすさび、電車が乗り入れる。鳴海くんはグレーの瞳を瞬き、首を傾げていた。

 開いたドアから乗車し、いつものように扉付近に立った。

「あと一週間でクリスマスだし。二人でデート、出来るのかなって思って」

「……あ」

 ーーそっか、その事か。

 私は、昨日の夜を思い出し、首を縦に振った。

「うん。大丈夫、だよ? 昨日お母さんから返事貰えて。二十五日の午後、仕事入ってたみたいなんだけど。休めるようにしてくれたから」

「あ。そうなんだ?」

「うん」
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