シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 電車が揺れ、時折風圧で窓がガタ、と音をたてる。

「て言うか、お母さんって何の仕事してるの?」

「あ、えっと。ホームヘルパーの仕事だよ? 介護が必要な人のお家へ伺って、家事のお手伝いとかをする仕事」

「……へぇ。そっか。大変そうな仕事だね」

「うん。でも、お母さんは基本、人と話すのとか好きだし、色々な事が勉強になるから楽しいって言ってるよ」

「ふ〜ん。良いお母さんだよねー、沙耶さんのお母さん」

 不意に優しい眼差しで見つめられ、ドキンと心臓が跳ねる。

「うん」

 私は俯きがちにはにかんだ。自分の母親を褒められると嬉しくなる。それが大好きな人からなら、特に。

 鳴海くんは腕組みをしながら窓にもたれ掛かり、そっかー、と呟いた。

「二十五日の午後って言っても、夕方ぐらいまでだよね? あんまり遠出も出来ないし、どうしよっかな……」

「あの…。別に、どこかのカフェでゆっくりお茶するだけでも良いよ? 個人的には、映画とかカラオケも好きだけど……出来れば鳴海くんと顔見て、ゆっくり話がしたい」

 クリスマスだからといって、別に特別な事をしなくてもいいと告げたつもりだが。鳴海くんは真顔で目を瞬き、うん、と言って俯いた。

 ーーもしかして。それだとつまらないと思われたかな?

 車体が徐々に低速し、降りる駅へと辿り着く。

「じゃあ、俺。先行ってるね?」

「うん」

ーーって。
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