シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 コートのポケットに手を入れたまま、彼は曖昧に首を捻り、うーん、と頭を抱えていた。

「……その、なんて言うか。詳しく話すと長いから。かいつまんで言うけど、それでも良い?」

「え? あ、うん」

 ーー何だろう? そんなに大変な事情なのかな?

「ちゃんと話してなくてごめんね? 何か。言うタイミングとか考えてたら、そのままになっちゃってて。沙耶さんからしたら大した事じゃないかもしれないけどさ……」

「……うん?」

「母さんがさ、今付き合ってる彼氏と再婚したいって……初めて言われたのが四年前で」

「え、うん」

 ーー四年前?

「俺さ、その時高一だし。正直、離婚するまで父親に苦しめられてた母親を間近に見てたから……何でまた結婚なんかするんだって、その彼氏目の前にして一度猛反対してるんだよね」

「そう、なんだ……?」

「うん。だから母さんもその彼氏も、結婚をずっと先延ばしにしてて」

「……うん」

「でも。俺もハタチになったし。やっぱり結婚の意思も変わらないから、もう一度彼氏に会って欲しいって、再三母親から電話で頼まれてたんだ」

「……」

 ーーどんな気持ちだったんだろう?
< 185 / 430 >

この作品をシェア

pagetop