シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 母曰く、「その方が颯太にとっても安心だと思うし」だそうだ。

 仕事だと嘘をついて出掛けるのは申し訳ないけれど、確かにそれが最善の道だと思った。

 私が「友達と遊びに行く」と言うと、颯太は一緒に行きたいと駄々をこねる。それを断ると、どうして行ったらいけないの、と怒られ、収拾がつかなくなる。

「じゃあ、颯ちゃん。ママ行って来るね?」

「……うん。早く帰って来てね?」

 玄関口で寂しそうに見送られ、チクンと胸が痛くなる。私は笑顔で小さく頷いた。

 家の門扉を開けて、出勤時と同じく自転車を出した。彼との待ち合わせはいつもの最寄駅だ。

「沙耶さん!」

 駐輪場に着くと、既に鳴海くんが待っていて手を振っていた。

「おはよう。鳴海くん、早いね?」

「うん。沙耶さんとデートだと思ったら、やけにそわそわしてさ。早めに出て来ちゃった」

「そうなんだ?」

 うん、と眉を下げて照れ笑いする彼を見て、自然と胸が熱くなる。

 ーー楽しみにしてくれてたのかな。だったら嬉しい……。

 自転車をきちんとスタンドに停めて、駅へと歩き出す。

「それじゃあ、行こうか?」

「うん」

 ーーこれで手が繋げたら最高に幸せなんだけど。

 そう思いつつも、私は肩に掛けた鞄の持ち手を両手で握りしめた。

 私も颯太に後ろめたい事はしないと決めたのだ。母親なのだから、子供の気持ちを裏切る事だけはしない。

 先を歩く彼の隣りに並び、目を見合わせて笑った。

 ***

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