シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
16.クリスマスデート
デートの時間は、普段出勤する時間から帰宅するまでの時間なので、午後七時過ぎには帰らなければいけない。とは言え、今がまだ朝の九時過ぎだから、帰宅まであと十時間もある。
駅のホームに並びながら、私は左手の腕時計に目を留めた。
「午前の回って確か、十時十分からだったよね?」
鳴海くんが首を傾げて私を見ていた。
「あ、うん。まだ全然余裕あるから大丈夫だよ」
そこでいつも乗る通勤電車がブレーキの余韻を残して停車した。ため息のような音が鳴り、左右に扉が開かれる。乗り込むといつもの光景が目の前に広がっていた。
壁にもたれかかりながらスマホをいじる女子大生や、吊り革を持ちながら文庫本片手に読書をするサラリーマン。そして私たちが立つドア付近の座席には、スマホでスワイプを繰り返すOLさんが我関せずといった雰囲気で座っている。
何ら変わりの無い朝の風景の筈だが、いつもよりキラキラして見えた。
母親になってから初めて出来た彼氏とのデートに、私は完全に舞い上がっていた。
今日のデートは、午前中に恋愛ものの映画を観てからランチをし、夕方は街中のイルミネーションを見て歩き、帰宅する予定だ。
晩ご飯も一緒に食べてから帰りたいのだが、時間の都合上、そうできない。それに仕事の時は毎日帰ってからご飯を食べているので、今日も当然そうしなければいけない。