シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ーー何て言うか。ゲームのキャラクターみたい。

「下行きですが、大丈夫ですか?」

「あ、はい」

 学生さんの背後でエレベーターが閉まり、彼がくるりと私たちに背を向けようとする。

「え、あれ?」

 急に慌てる学生さんに私はキョトンとなった。

 ーーあ、鞄……。

 既に閉ざされた扉に、彼の黒い鞄が挟まっていた。

「おにーちゃん、だいじょうぶ?」

 息子の颯太(そうた)が両目をぱっちり見開いて、学生さんを見上げた。彼の身なりが珍しいからか、食い入るように見ている。

「大丈夫、だよ?」

 ぎこちない笑顔で息子に答えてくれた彼は、恥ずかしそうに頬を染めた。

 うちの子がすみません、という意味で申し訳程度に会釈をした時。急にガクンと音がし、体が上下に揺れた。

 ーーえ、なに??

 颯太と繋いでいた手が一瞬離れて、慌てて繋ぎ直す。

 シュウウン、とエレベーターの天井辺りで機械音が鳴る。

 ーーまさか。

「……エレベーター、止まった?」
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