シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「今日はありがとう。鳴海くんと沢山話せて嬉しかった」

「うん……、俺も」

 それじゃあ、と言って名残惜しく手を振る。後ろ髪を引かれるせいか、それとも私の視線が気になるからか、鳴海くんはたびたび振り返り、アパートまでの道のりを進んだ。

 彼が手を振り、やがてスマホにメッセージが届く。

【大好きだよ。おやすみ】

 スマホの画面を見つめ、私は込み上げる想いにキュッと唇を噛んだ。

 ーー本当は今日。

 鳴海くんの部屋に、少しでも上がれたらなって思って。行ってもいいかお願いするつもりだった。

 だから凄くドキッとした。どこか行きたい所は無かったかと聞かれて、図星を突かれて焦った。

 鳴海くんの私生活が知りたくて、どんな部屋で寝起きしているのか見たくて……家を出る前まではいつ言おうか考えたりもしていた。

 だけど……。

 それは颯太の気持ちを無視した"女としての感情"だから。

 だから今はまだ言わない。鳴海くんの部屋で、鳴海くんと二人きりになったら。

 私はきっと……。

 彼と触れ合いたいと思ってしまうから。

 今はまだ……その時じゃない。

「私こそ。意思を強く持たないとなぁ…」

 独り言は夜気に混ざって溶け、私は玄関扉に手を掛けた。

 ***

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