シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
17.指輪と拠り所
左手の薬指で光る華奢なリングを見つめ、私はほう、と息をついた。
あれから年末年始を差し支えなく過ごし、二週間と数日ぶりに本店勤務から購買部に戻ってきた。今日は新しい年が明けて初の出勤日だ。
鳴海くんはと言えば、冬休み中は課題で忙しかったようで、サイズ変更をした指輪をクリスマスの翌々日に渡され、その時に頼まれていたアウターを一着貸した。日々メールや電話はするものの、その日からちゃんと会えておらず、今朝久しぶりに顔を合わせた。
「あらあら、沙耶ちゃん。また指輪見てるの?」
「あ、祥子さん」
ともすればすぐにぼうっとしてしまう私に気付き、祥子さんが商品チェックする手を止める。
「前に本店でも言ったけどさ。仁くんってホント沙耶ちゃんにメロメロだね〜」
「あ、あはは……」
恥ずかしくて、私は誤魔化すように笑った。本店勤務の年末、祥子さんには既にクリスマスデートの一部始終を話している。
彼女曰く、「初めてのプレゼントに指輪を選ぶなんて、もはや独占欲の現れだね。しかも左手の薬指でしょう? かなり愛されてるよね〜」だそうだ。
そして続けてこうも言っていた。
「あ、でも。既にプロポーズは受けてるから、婚約指輪としてプレゼントされても不思議では無いのか……」と。