シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 家族の絵を描いたという事から、きっと自分の隣りに父親と母親がいる、お友達の絵を"普通"と捉えて、颯太はお友達を羨んでいるのかもしれない。

 父親が居ない事でこんなに悩ませているのが歯痒くて、私はただ颯太の頭を優しく撫でて抱きしめる他なかった。やがてスゥスゥと微かな寝息が聞こえて、そっと枕に頭を置いた。

 無邪気な寝顔を見つめ、「大丈夫、あなたは強い子だから」と囁く。

「颯ちゃんがいるから、ママも強くなれるんだよ」

 サラサラと流れる髪を愛情たっぷりに撫でていると、不意に視界が滲んだ。私はそっと部屋を出る。

 颯太が父親を欲しがっているのは、薄々だけど感じていた。手を繋いで初詣に出掛けた時も、ショッピングモールへ買い物に行った時も、家族連れの子供に気付いて、颯太は肩車をしてくれるお父さんをジッと見ていた。

 何も言わなかったけれど、颯太の気持ちは痛いほどに伝わった。

 でも父親を求めていると分かったところで、易々と結婚出来ないのが現状だ。父親イコール、ママのパートナーという構図を颯太が理解するにはまだ早過ぎる。

 ーー今は颯太のために……颯太の心を満たす働きをしなくちゃ……。

 頬に落ちた涙を拭い、私は階下へと降りた。

 翌日。保育園に行くために颯太を起こしに行くと、颯太は布団の中で具合が悪そうに丸まっていた。

「……ママぁ。のど、痛い…」

 ーーえ。
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