シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか？
　私は彼女たちを見つめ、ただ首を傾げるしか無かったのだが。会話の答えは割とすぐに与えられた。

　お昼ごはんを食べ終えてから、お弁当箱を手に給湯室の扉を開ける。

　スツールに座った津島さんがちょうど煙草に火を点けた所で「お疲れ」と声を掛けてくれた。お疲れ様です、と会釈し、空のお弁当箱を洗い始める。

「水嶋ちゃん、息子さんが病気だったの？」

「……え？　ああ、はい。急に熱出しちゃって、小児科に連れて行ったら溶連菌だと言われました」

「……そっか。大変だったんだね？」

「そう…ですね。特に抗生物質を飲ませるのが大変でした。苦いからって飲むのを嫌がっちゃって」

　颯太の様子を思い出しながら苦笑していると、津島さんもつられて笑う。

「……じゃあさ、水嶋ちゃん」

「はい…？」

「別に結婚した訳じゃ無いんだよね？」

　ーーえ……？

　不意を突かれて何も言えずに手が止まった。流し台に流れる水音がやけに大きく響いて、蛇口を締める。

「あ、いや。ごめんね？　学生が噂してたから」

「噂って……」

　ーーそういえば指輪の事で誤解されてたんだった。

「……水嶋ちゃん。休んでる間に新婚旅行に行ってたんじゃないかって言う子もいてさ。……その、ちょっと前に、二年の鳴海と付き合ってるって噂があったでしょ？」

「あ、はい」

　ーー現に今も付き合ってるけど……。

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