シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 黙々と洗い物を終え、再度ため息を落とした。どうしてそうなるんだろう、と頭を抱えるしかない。

 ーー「普通気まずくて来れないでしょ。仁くんに悪いとか思わないのかな?」

 あの女の子が言ってたのはこの事だったんだ。

 私が鳴海くんを裏切って別の人に乗り換えた、そして結婚した。そう誤解されているからああやって言われたんだ。

 誰もが鳴海くんと結婚とか婚約、なんて事には考えが及ばない。それは多分、彼がまだ学生だからだ。

 彼氏に指輪をプレゼントされて、それを左手の薬指に着けるなんて事は、往々にしてある事だと思う。

 ただ、それを誰かが勘違いして、結婚したと言って周りに広めた。噂が出回るのは大抵そんな理由だ。

 人伝(ひとづて)に聞いた事は、頭から鵜呑みして疑わない。自分に関係のない人の事なら特に。

「……タイミングが悪かったのかな」

 年が明けてから指輪をしていった事と、コレクションがある週末にまとめて休んだ事。そのせいもあって、変な誤解をされたのだろう。

 鳴海くんと別れて別の人と結婚した、そう思われているのが何よりも嫌だった。

 濡れたお弁当箱を拭いてから、またため息一つを残し、私は給湯室を後にした。

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