シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 今日津島さんから聞いた学生たちの噂が気になって、私は鳴海くんに声を掛けた。

「ああ、沙耶さんお疲れ。あのさ、前に言ってたコレクションの作品なんだけど……今日先生から返却されてさ」

「あ、……うん」

 自分の用件を切り出せずに、ついぎこちない笑みを浮かべてしまう。

「……? 沙耶さん、どうかした?」

「えっ」

「なんか……。元気ない、みたいな感じだけど」

「あ〜……えぇと、その」

「沙耶ちゃん、ごめん! ボタンホール聞いてー?」

「あ、はい!」

 ちょうどレジ担の祥子さんから声が掛かり、受付用紙を取りに行く。

「じゃあ仁! 俺ら先帰るなー?」

 買い物を終えた澤野くんと愛梨ちゃんが、鳴海くんに手を振って階段を昇って行く。

「おう、お疲れ〜」

 私はそんな彼らを横目に、ボタンホールの受付に集中する。

 洋服を持ち込んだ女の子に名前を書いて貰い、臼井(うすい )詩乃(しの)ちゃんというのか、と何気なく思う。専攻コースは違うけれど、鳴海くんと同じ二年生だ。

 小柄だけど私より少し背丈が高いなと思って見ていると、九センチは有るヒールの靴を履いていた。
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