シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「なに? 颯ちゃん」

「……別に。もういいもんっ」

 プクッと頬を膨らませ、颯太はそっぽを向いた。

 ーーあぁ、しまったなぁ。

 スマホを優先した事でヘソを曲げられてしまった。

「沙耶、そろそろ八時半よ?」

「あ、うん」

 いつもなら颯太を寝かせに布団に入る時間だ。

 ーーどうしようかな。今寝ようって言っても、やだって言われそう……。

 ソファーに座ったままで、寝んねを誘えずにいると、母が颯太の前にしゃがみ込んで声を掛けた。

「颯ちゃん、ママと一緒に寝んねの時間だよ? おもちゃ、おばあちゃんと一緒に片付けようか?」

「……うん」

 褒め上手の母の甲斐あって、いつもの時間に颯太を寝かせる事ができた。

 無邪気な寝顔を見てホッと安堵し、そろりと部屋を抜け出す。リビングに降りてからスマホを開け、鳴海くんと連絡を取り合った。

 室内着から温かい格好に着替えて、財布に仕舞ったままの指輪を填めた。玄関でコートを羽織った時。

「沙耶。こんな時間にどこ行くの?」

 母に声を掛けられた。

「ごめん、お母さん。ちょっとだけ、鳴海くんに会いに……」

 母は眉をひそめ、靴箱の上にある置き時計を一瞥した。
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