シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「お風呂上がりに出ると風邪ひくわよ?」

「うん。分かってるけど……」

「あんまり遅くならない内に帰って来なさいよ? 夜は危ないんだから」

「はぁい」

 日頃から夜な夜な外出する事が滅多にないので、母は時に大目に見てくれる。

 玄関扉を開けると、門扉に鳴海くんが立っていて、ドキンと胸が高鳴った。自然と顔が綻んでしまう。

 彼の手に提げた紙袋を見て、「何それ?」と尋ねるが、「あとで言うよ」と笑みを向けられた。

 二人で近くの公園まで歩き、ベンチに腰を下ろした。すぐそばに明々とした外灯が立っているので、夜でも比較的明るく感じる。

「急に会いたいなんて言ってごめんね?」

「ううん、嬉しかった。学校じゃゆっくり話せないから」

「そうだよね」

 鳴海くんの左耳で、ダビデの星が揺れる。彼特有のグレープフルーツの香りが鼻腔をくすぐり、ドキドキと心音が高まった。

 ーーやっぱり。カッコいいなぁ…。

 二人きりでこうして会ってしまうと、ついつい欲が出て、甘い雰囲気に満たされたくなる。キスがしたい、なんて。もう何回も思った事だ。

「話って……、あの変な噂の事?」

 先に話を切り出した彼にハッとして、私は頷いた。

「あ、うん。そう! 鳴海くんも聞いたんだね?」

「うん。今日バイト中にね……同じ学校の奴から、沙耶さんは結婚したからやめとけ、みたいな事を言われた」
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