シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「トレンチコート?」

「うん」

「え、待って、これ。本当に鳴海くんが??」

「……? うん、そうだよ?」

 ーー嘘でしょ? まるで既製品みたい。

「どう、かな? 沙耶さんのイメージでデザインしたんだけど。好みに合いそう?」

 私は目を見張ったまま、何度か首を縦に振っていた。

 淡いサーモンピンクのトレンチコートは襟ぐりが大きく開いていて、腰部分をギャザーで寄せたり、リボンベルトが付いたりしていて、とにかく可愛らしい印象を受けた。肘から下の袖部分に大きめのフリルが二つ連なっているのも可愛い。

「凄いね、鳴海くんっ。こんなに可愛いの作れるなんて凄いよっ」

「……じゃあ、沙耶さん貰ってくれる?」

 コートを丁寧に畳みながら、しんみりとした気持ちで鳴海くんを見た。

「あの……、いいの? 私には勿体ないぐらいだけど…」

「沙耶さんに着てもらいたくて作った服だから。その方が俺的には報われるかな」

「……そっか」

 ーーだからアウターを貸して欲しいって言ったんだね。

「そういう事なら着させて貰うね? 私、アウターでこんな可愛い色味の服、持ってないから凄く嬉しいっ」

「そうなんだ?」

「うん。サーモンピンクって良いよね。和むって言うか癒される」

「あはは、そうだね」

 紙袋に畳んだコートを仕舞った時だ。

 ーー「サーモンピンク激カワだったし、あたしも良い経験になったよ!」

 今日聞いた台詞が、ふと脳裏に蘇った。

 ーーあれ? 何だっけ、これ。
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