シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「次は四時半に開けるから、その時においでね?」

「えぇ、そこを何とか」

「でももうシャッター閉めちゃったし」

「模造紙一枚でいいんで」

 そう言って鳴海くんは白いケースの中から丸めた模造紙を一本取り出した。

「もう、仕方ないなぁ。じゃあ、二十円ね?」

「あざーっす!」

 祥子さんの手に小銭を置いた鳴海くんと目が合った。

「沙耶さん、バイバイ」

「あ……、うん」

 すれ違いざま、フワッと香水のような匂いがして思わず振り返る。

 ーーん? あれ??

「ちょ、ちょっと鳴海くんっ」

「えっ?」

 階段を上がろうとする彼の背中に慌てて声を掛けた。後ろで祥子さんが首を傾げているかもしれない。けれど私は鳴海くんに近付き、首元のソレをスッと引っ張り出した。

 ーーやっぱり。

「えぇっ、な、なに??」

「……鳴海くん、服のタグ付いたまま着てるよ?」

「え! 嘘っ!? やべっ!」

 途端に鳴海くんの顔が耳まで真っ赤になり、可愛くて笑ってしまう。

「ふふっ。朝からずっと気付かずに着てたんだね? 待ってて。今ハサミ持ってくるから」

 少し背伸びをして、ちょきんと糸を切った。

 ーー鳴海くんのこの香り。何の香水だろう?

 はい、とタグを渡すと鳴海くんはまだ赤面していた。
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