シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ねぇ、鳴海くん」

「うん?」

「今日、臼井さんが言ってたサーモンピンクの服って、これの事?」

「……え」

 突然の問いに鳴海くんは表情を固めた。

「放課後に二人で話してたの聞こえちゃって。この間はお疲れって声掛け合ってたから気になってたの。鳴海くん、彼女にありがとうって言ってたでしょ?」

「……え、ああ。コレクションの事か」

「コレクション?」

 うん、と頷き、鳴海くんが私をジッと見た。

「俺さ、アイディアが纏まんなくて、コレクションに出品するかどうかギリギリまで迷ってたんだ。
 メンズで作るなら自分で着て出れば良いんだけど、俺が作ろうって思ったのレディースだから……モデルに着てくれる奴を急いで探す必要があって」

 ーーえ。それじゃあ……。

 鳴海くんの言わんとしている事を察して、口をついて言葉がこぼれる。

「臼井さんに、そのモデルを頼んだって事?」

「うん。バイト中にさ。どうしようかなって愚痴ってたら、私が着ようかって引き受けてくれたから。それで」

「……そう、なんだ」

 ーーあの子が着たんだ。

 そう気付いた途端、言いようのない焦燥が心の中を埋め尽くした。彼女が階段を上がる間際に見せた、私への嘲笑が忘れられない。

 "仁くんの服、あたしが先に着たんだよ?"

 ……そう言われてたみたいで…。
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