シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ーーああ、もう嫌だ。こうやって今日は変なくしゃみを連発するんだ。

「あ、はい。大丈夫で、」

「沙耶さん」

「あ、うん。なに?」

 若干の鼻声で鳴海くんに応えた。それまで黙っていた鳴海くんが、体ごと私の方を向いてにっこりと笑った。

「俺、今日バイト無いからさ。一緒に帰ろ? 沙耶さんの仕事が終わるまで、課題でもして待ってるから」

「えっ! いいの?」

「うん」

 日頃から鳴海くんも色々と忙しいので、私と帰るためだけに時間を作ってくれるのが何よりも嬉しい。

「じゃあ、また購買行くね? お弁当箱も返さないといけないし」

「うん」

 また後でね、と言って彼が私の頭をポンと撫でた。瞬間、頬がカッと熱くなる。

 ーーって、あれ? 触らないんじゃなかったの?

 とはいえ。単純に嬉しいけど……。

 頭の中をハテナが飛び交う中、私は二階へ昇って行く彼に手を振った。

「……鳴海のやつ。見え見えの牽制(けんせい)張りやがって……」

「え…?」

「いや、何でもないよ。風邪、お大事にね?」

「あ、はい」

 ありがとうございます、と津島さんに会釈を残し、私は地下一階へと降りた。

 ***
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