シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
19.迷子捜索の末に


 大寒を乗り越え、二月も半ばを過ぎた頃、徐々に春らしい日差しが地表に降り注いでいた。とは言え、割と暖かいと感じる日と、冬の名残りで底冷えする日が交互に訪れ、未だコートは手放せない。

 あれから私に関する変な噂は、一部の学生の間でのみ囁かれ、噂に尾ひれが付いて気にするのが馬鹿馬鹿しくなった。

 私に信頼を寄せてくれる鳴海くんや祥子さん、そして愛梨ちゃんや澤野くんが単に誤解した生徒たちに否定してくれたのも大きな成果だったと思う。

 噂を気に留める余裕など無く、それぞれの課題に追われ、学生たちは春休みを迎えた。

 学校がお休みに入ると、購買部での勤務も無くなり、私と祥子さんは西店と呼ばれる場所に仕事を移した。

 西店は、日頃お爺ちゃん店長と女性店員さんの二人体制で回していて、服飾小物や雑貨、生地や裏地などを商品として取り扱っている。

 本店と同じく接客が基本だが、この時期の西店勤務はそれとは別に、毎年大事な業務を任されている。それと言うのも…。

「今年はファッションクリエイター(FC)学科、三百だって。結構多いよ、沙耶ちゃん」

「そうなんですね。他はでも、五十とか三十とか、そのぐらいですもんね?」

「まぁ、多く見積もってね」

 数枚に綴ったプリントの束に目を通しながら、私は息をついた。
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