シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ねぇ、ママー」

「うん? どうしたの?」

「ぼくおもちゃ屋さんで、あたらしい電車見たいっ」

 ーー新しい電車かぁ……。

「見るのは良いけど、欲しくなっても買えないよ?」

「分かってるよー」

 ーーさて、どうだろうか?

 颯太の言葉がどこまで本気か分からなかったけれど、私は颯太とエスカレーターを降りて一階のトイ・ショップに向かった。

 ゲートを抜けると、颯太は我先にと走り出し、プラレールの置かれた棚へとまっしぐら。

 私がその通路へ辿り着く頃には、目当ての電車サンプルを手にしてフロアに座り込んでいた。電車で遊ぶ姿を見て、まったく、とため息が浮かぶ。

 颯太が手に持っていたのは、一月に発売されたばかりの電車で、自動車を運んで走る大型運搬車だ。電車の上にミニカーを最大五台まで積載できるらしく、日頃からCMを見ては目を輝かせていた。

 私は颯太の手前へ、膝を折った。

「颯ちゃんが見たかったのって、その電車?」

「うんっ! このミニカーをのせて走るんだよ? カッコいいでしょ?」

 同じくサンプルのミニカーを手に持ち、それを電車に載せて走らせている。

 ーーやれやれ。こうなったらテコでも動かないぞ。

 どうしようかな……。

 とりあえず、暫くは様子を見るしかないと思い、一旦腕時計に目を落とす。短針と長針は十一時四十二分を示していた。

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