シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ーー十二時前か。

 丁度区切りの良い時間帯なのがありがたい。

「颯ちゃん」

「うん、なーにー?」

「もうお昼前だから、ここで遊ぶのは十五分だけだよ?」

「うん」

「十二時には車に戻るからね?」

「うん」

 遊びに夢中の生返事。

 ーーまぁ、仕方ないか。

 売り場の前で遊ばせるのは、流石に迷惑になると思い、私は颯太を促し、近くの空いたスペースに移動した。

 腕時計の針をチラチラと気にしながら、颯太が電車に関しての自己流豆知識を披露してくれる。こういう姿は正直、子供らしくて可愛い。

 遊び時間の十五分はたちまちに過ぎ去った。長針と短針がぴったりと重なった所で声を掛ける。

「颯ちゃん、もう十二時だよ? 車に戻ろうか?」

「うーん…」

「お昼だし、ママお腹ペコペコだよ。帰って一緒にお昼ご飯食べよう?」

「うーん…」

 手にした電車を離さないまま、予想通りの気のない返事。どうするかな?

「ねぇ、颯ちゃん」

「なにー?」

「もうお約束の時間だよ?」

「うん」

「電車さんもそろそろお休みさせて、ママたちも車に乗ろう?」

颯太はそこでピタリと手を止め、丸い瞳で私を見上げた。

「じゃあママ、これ買って?」

「……え。買わないよ? 今日は見るだけ」

「じゃあいつ買うの?」

「……うん、そうだね。お誕生日の時かな?」
< 248 / 430 >

この作品をシェア

pagetop