シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ニコッと笑いながら、出来るだけ優しい口調で諭すのだが。

 颯太はフイとそっぽを向き、頬を膨らませた。

「そんなのイヤ、今ほしいもん!」

「颯ちゃん、そんな事言わないで? 今日は見るだけってお約束したでしょ?」

「してないもん!」

「したよー? おもちゃ屋さんに来る前」

「ゆびきりげんまんしてないもん! もう、ママ、あっち行って!」

 颯太の強い口調を聞きながら、ため息がもれた。

 ーーどうしよう、困ったな。どうやって言い聞かせよう?

 暫く何も言えずに黙っていると、颯太が電車を持ちながらボソッと呟いた。

「ぼくだって、パパがいたら買ってもらえるのに」

「……え」

「だって、みんな。パパに買ってもらってるもん。さっきの子も、ほいくえんのお友達も…っ」

「……颯ちゃん、それは」

 多分、お誕生日か何かで、と言い掛けるのだが、颯太のキツい口調でかき消される。

「何でぼくにはパパがいないの!?」

「そ、」

「ねぇ、何で!?」

 私はグッと口を噤んだ。顔の中心からカッと熱が生まれて赤面してしまう。

 颯太の声はこの場に響き渡り、内容が内容なだけに一瞬で好奇の視線を浴びていた。「……シンママかな?」とどこかで誰かが囁く声も聞こえる。

「そ、颯ちゃん。今日はもう電車お片付けして。一緒に帰ろう?」
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