シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 颯太は未だに怒ったままだったが、持ち出した棚に電車を置きに行った。その姿を見て、ホッと息をつく。颯ちゃん、と名前を呼んで私も立ち上がる。

「……本当はパパが死んだなんてウソなんだ」

 ーーえ。

「ママのウソつきー!」

「……そ、」

 あっという間の出来事だった。

 颯太はクルリと踵を返し、私に背を向けて走り出した。

 ーーうそ。

 焦って私も駆け足になり、颯太を追いかける。

「……あ、ごめんなさい。すみません……、ちょっと通りますっ」

 そんな言葉を連発しながら、おもちゃ屋さんの人混みを駆け抜ける。店外に出た頃には、颯太の姿はどこにも見当たらなかった。

「……どうしよう、颯太……」

 颯太が故意にはぐれるのはこれで二回目だ。以前は鳴海くんとトムカ博に行った帰りだった。

 前に見た駅構内と同じく、日曜日のショッピングモールは思った以上に親子連れでごった返している。幸いお昼時なのもあって、飲食店街へ向かう人々が多く、まだ探せば見つかると思った。

 背中に冷や汗をかきながら、キョロキョロと目を忙しなく動かした。

 探す時間が一分一秒と延びるほど、心臓の奥がギュッと痛んで、心配でたまらなくなる。

 昨今、テレビでこんなニュースを見た事がある。どこかのショッピングモールで、子供だけでトイレに行かせたらそのトイレの中で何者かに連れ去られて殺されたって。

 妄想に近い恐れが頭をもたげ、私は必死で颯太を探し続けた。
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