シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「お、お兄さんだよっ、颯ちゃん」

「あはは、いやいや。年齢から言ったらおじさんだよ」

 全く気にした素振りのない津島さんを見て、すみません、と会釈する。

「おじさんはね、ママと同じ場所で働いてる人だよ?」

「そうなんだ。……おなまえ、なんていうの?」

「うん、津島 陸仁(りひと)って言います。よろしくね?」

「あの……、ぼく。みずしま そうたです」

 自己紹介をして、颯太はペコっと頭を下げた。

「颯太くん、よろしくね。今四歳だよね、しっかりしてるなぁ。男の子だからママを守ってあげるんだよ?」

「……うん!」

 気持ちの落ち着いた颯太の頭をまた撫でて、私は中腰から立ち上がった。颯太が見つかり、ホッと安堵したら急に空腹を感じた。腕時計に目を落とすと、一時を十五分ほど過ぎていた。

「今日はお休みのところ、本当にありがとうございました」

「いや」

「鳴海くんも。颯太と一緒にいてくれてありがとう」

「ううん。沙耶さん、もうお昼だし帰るよね?」

「あ、うん。お腹すいたし……あっ、鳴海くんも一緒に帰る? 車だし送ってくよ?」

「え。ああ、いや。俺はまだこっちで用があるから」

「そうなんだ?」

 うん、と言って鳴海くんは手を挙げた。

「それじゃあ、沙耶さん。またね?」

「うん」

「颯太くん、バイバイ?」

「バイバーイ」

 鳴海くんは背を向けて歩き出し、やがて近くのエスカレーターを登って行った。
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