シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「……あ、じゃあ水嶋ちゃん。僕たちもこれで。また四月にね?」

「はい。お疲れ様です」

 津島さんとハルくんに会釈をして、私は颯太と一緒に駐車場へと戻った。

 車に乗ってからも颯太は大人しく、ほとんど何も喋らなかった。鳴海くんと会って何か話をしたのかを尋ねたけれど、颯太は「ううん」と力なく首を振るだけだ。

 ーー「本当はパパが死んだなんてウソなんだ」

 ーー「ママのウソつきー!」

 少なからず、アレは颯太の本心だと思っている。だからこそ、"本当のパパの話"を先延ばしにはできない、ちゃんと話さなければならない。

 でも、今さらどんなタイミングで話せば良いのかも分からない。

 それでも颯太の様子を見て、私は父親の事を話そうと決めていた。子供なんて正直困ると言っていた、あの人の薄情さはオブラートに包んでしまえば良い。颯太の中にこれ以上"何で"を降り積もらせてはいけない。そう思うのだが。

 それから何日たっても、颯太は"パパの話"を口にしなかった。欲しい電車に関しても、「おたんじょう日までガマンする」と言って笑っていた。

 *

 三月に入り、折り畳み傘が手放せなくなった。

 午前中穏やかに晴れていたかと思えば、午後からは薄暗い雲に覆われて、小さな雨粒をそこら中に散らす。太陽の日差しがある中でも、風に乗って小雨が降り落ちてくる。
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