シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
コートのポケットにあると思っていたスマホがなくて、若干慌てた。
「すみません、祥子さん。忘れ物したので、先に帰ってて下さい」
お疲れ様です、と会釈して、私は再び地下への階段を降りた。
カツカツと低いヒールを鳴らし、休憩室の扉を開けると、三つ折りにした模造紙の上にスマホが置きっぱなしになっていた。
それを見て、ホッと安堵する。
「……あれ? 水嶋ちゃん、お疲れ。まだ残ってたんだ?」
「……津島さん」
スーツ姿の津島さんが、休憩室を横切り奥の個室に大きな段ボールを運んでいた。私はお疲れ様です、と頭を下げた。今度こそスマホをポケットに仕舞う。
「ちょうど帰るところだったんですけど、忘れ物しちゃって…」
「そっか。今日は大変そうだったね? おかげで声を掛けそびれてたよ。お疲れ様」
「あはは、もう忙殺されちゃいました」
肩をすくめて笑っていると、後ろから手の塞がった事務員さんがもう一人現れて、慌てて通路をあける。
「あ、すみません」と言って避けるのだが、その人は手にした段ボールを床に下ろして私を正面からジッと見た。
ーーあ。
口をポッカリと開けた瞬間、彼は蘭々と目を輝かせた。
「沙耶ちゃん! お疲れ様。俺、今日からここの事務局で働く事になったんだ。よろしくね?」
彼のテンションを見て呆気に取られていると、急に右手を取られて握手していた。
「そ、そうなんですね。よろしくお願いします」
ついハルくん、と呼びそうになって、「皆川さん」と言い添えた。
「ハルで良いよー、沙耶ちゃん!」
そう言って、ハルくんは嬉しそうにクシャッと笑った。
***
「すみません、祥子さん。忘れ物したので、先に帰ってて下さい」
お疲れ様です、と会釈して、私は再び地下への階段を降りた。
カツカツと低いヒールを鳴らし、休憩室の扉を開けると、三つ折りにした模造紙の上にスマホが置きっぱなしになっていた。
それを見て、ホッと安堵する。
「……あれ? 水嶋ちゃん、お疲れ。まだ残ってたんだ?」
「……津島さん」
スーツ姿の津島さんが、休憩室を横切り奥の個室に大きな段ボールを運んでいた。私はお疲れ様です、と頭を下げた。今度こそスマホをポケットに仕舞う。
「ちょうど帰るところだったんですけど、忘れ物しちゃって…」
「そっか。今日は大変そうだったね? おかげで声を掛けそびれてたよ。お疲れ様」
「あはは、もう忙殺されちゃいました」
肩をすくめて笑っていると、後ろから手の塞がった事務員さんがもう一人現れて、慌てて通路をあける。
「あ、すみません」と言って避けるのだが、その人は手にした段ボールを床に下ろして私を正面からジッと見た。
ーーあ。
口をポッカリと開けた瞬間、彼は蘭々と目を輝かせた。
「沙耶ちゃん! お疲れ様。俺、今日からここの事務局で働く事になったんだ。よろしくね?」
彼のテンションを見て呆気に取られていると、急に右手を取られて握手していた。
「そ、そうなんですね。よろしくお願いします」
ついハルくん、と呼びそうになって、「皆川さん」と言い添えた。
「ハルで良いよー、沙耶ちゃん!」
そう言って、ハルくんは嬉しそうにクシャッと笑った。
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