シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「沙耶ちゃん、お疲れ〜っ」
不意にひょこっと顔を出したスーツ姿の彼に、口元が引きつった。
「……あ。お疲れ様です」
「あらぁ、また出たね〜。ハル坊」
「ハル坊は止めてよ、祥子さん! 沙耶ちゃんお昼まだだよね? 今日こそは一緒に食べよう!」
レジに腕を付いてズイと身を乗り出す彼に、困って首を傾げた。
「……あの。ごめんね、ハルくん。私お昼はお弁当だし、祥子さんと食べるから」
「えぇ〜っ??」
「ハル坊、いい加減あきらめな。沙耶ちゃん彼氏いるんだよ?」
「知ってるし! あの白頭だろー? アイツ年下のくせに生意気だよなー」
そう言って口を尖らせるハルくんを見て、「あんたもね」と祥子さんが返している。程なくして津島さんが現れた。
「"皆川"、サボってないでサッサと机の上の書類を片付けろ」
「ちょ、りぃ兄、ギブギブ…っ」
「りぃ兄じゃない、"津島さん"だ」
顎下を腕でホールドするプロレス技を掛けられて、ハルくんがすぐ側の事務局へと連行される。
「あははっ、相変わらずだねー、ハル坊は。確か沙耶ちゃんと同い年だっけ?」
「……はい。年齢が一緒なの知ってびっくりしました。てっきり年下だと思ってたので」
新入生販売日の日から、ハルくんは毎日購買部に入り浸る。そして本気か冗談かは分からないトーンで毎度告白をしてくれる。
「津島さんが言ってたんだけどさ。一向に落ち着かない従兄弟の就職先を、頭下げて決めたそうだよ?」
「そうなんですか」