シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ーーそう言えばスーツの見立ても津島さんがしたそうだし、色々と世話を焼いてるんだろうなぁ。

「まぁ、ハル坊を選ぶぐらいなら断然津島さんだねー」

 そう言った矢先、祥子さんは「あ」と呟き、口を噤んだ。

「沙耶さん、お疲れ。お弁当ありがとう」

 階段から下りて来た鳴海くんの顔を見て、ほっこりと胸が熱くなる。彼が差し出した空のお弁当箱を紙袋ごと受け取って、私は首を振る。

「ううん。今日時間なくて卵焼きがうまく巻けなかったんだけど、大丈夫だった?」

「ははっ、全部美味しかったよ。いつもありがとう」

 穏やかに微笑むその顔を見ると、また明日も頑張ろうとモチベーションが上がってくる。

「そう言えば今日はアイツ来てないの?」

 言いながら鳴海くんはキョロキョロと周りを窺った。

 アイツと言われて、ああと口元を緩ませ、苦笑する。祥子さんが嘆息して言った。

「ハル坊ならさっき来てたけど、津島さんに連れて行かれたよ?」

「そうですか。アイツ、沙耶さんの事狙いまくってるもんなぁ」

 鬱陶しい、と呟き鳴海くんがうな垂れる。

 ファッションクリエイター学科の鳴海くんは、今年が卒業の年だ。三年生になってから、課題の質も上がり、就職活動も始めなければいけないと言って、先日メッセージでボヤいていた。

「大丈夫だよ。私は鳴海くん一筋だから」
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