シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 私が臼井さんに抱いたように、余計な気を使って欲しくない、そう思って言葉を重ねた。

「毎日ちゃんと指輪もしてるし、結婚の意思も変わらない。そうでしょう?」

 言いながら微笑み掛けると、鳴海くんは幾らか頬を赤らめた。

 彼自身を安心させたいというのは建前で、本音を言えば私自身が安心したかった。

「……うん」

 照れた表情で頷いた後、鳴海くんは一転して、「あ」と真面目な顔付きで呟いた。

「颯太くんは元気?」

 ーーえ?

「……あ。うん、元気だよ? 特に病気もしてないし、保育園もちゃんと通ってるよ?」

「……そう」

 ーーうん? 何だろう?

「あ。昨日もね? 保育園の帰りにお母さんと公園に寄って遊んだみたいで。最近は砂場でお山作るのにハマってるんだって」

 鳴海くんの反応が気になりつつも、私は思い付く限りの事を話した。

「……そっか」

 言いながら彼は彼らしい笑顔で目を細めた。穏やかな笑みからは、颯太をちゃんと気にかけてくれているのが伝わって、温かな感情で満ちあふれた。

 *

 四月上旬から暖かみが増した日曜日の朝。急に颯太の心境に変化が起きた。

「今日もいい天気だね、颯ちゃん。また公園に行く?」

 白く明るい日差しを放つガラス窓を見つめて言うと、颯太はその窓にペタッと両手を付けて「うん」と大人しく頷いた。

「……ぼく。今日はジンくんと遊びたい」

「え……」
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