シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
22.私の知らなかった事
「……あ、颯ちゃん。おじいちゃんから電話だわ。ちょっと離れるけど、ちゃんとお砂場で遊んでてね?」
「はぁい」
そう言って、母が颯太の側を離れたのは五分にも満たない数分だったそうだ。電話を切ってから、再度砂場に目を向けると白金の彼が颯太の隣りで一緒に山を作っていた。
鳴海さん、と声を掛けようと一瞬思うが、二人が神妙な顔付きで話しているのを見て、母は言葉を飲み込んだ。程なくして、鳴海くんが立ち上がり「じゃあね」と言って踵を返した。母に一瞥をくれ、会釈してくれたらしい。
「颯太」と呼んで歩み寄った時、別の方向から子供の声がして、颯太の元へ駆け寄った。同じ保育園に通う三人の男の子だ。保護者は、と見ると、すぐ側のベンチで談笑していた。
颯太のお友達かなと思い、母は遠目にその姿を見守っていた。
「おまえ、また一人で山なんか作ってんのかよー」
「そうだよ」
出来たお山に小さな手でトンネルを作ろうとしている時だった。どういうわけか、一人の男の子が靴で山を蹴飛ばした。
「なにす、」
「バッカじゃねーの、パパに捨てられたくせに、ちょうしにのるな!」
荒々しい口調のその子を見て、母は内心ヒヤッとしたそうだ。"パパの話"は暗黙の了解で、普段から家族の中ではしないようにしている。
「うるさいっ、捨てられたんじゃないもん!」