シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 ーーそうだ、あの時だ。ショッピングモールで、迷子になった時。

 鳴海くんと戻って来た颯太は、彼と手を繋ぎ、やけに素直に見えた。

 あの時は颯太が見つかった安心感から、全く気にも留めなかったけど。以前の颯太を思い出すと、あんなに素直に鳴海くんに付いて歩くとは思えない。

 颯太の気持ちを汲んで、私には内緒にしておこうと思ったみたいだけど……。

 ーーどんな話をしたのか、明日鳴海くんに聞いてみようかな?

 *

「なんだ。もうバレちゃったのか」

 鳴海くんは小さく笑い、おどけて言った。

 翌朝、鳴海くんと駅で待ち合わせをした時、颯太との関わりについてどんな話をしたのかを尋ねた。その反応が今の言葉だ。

「じゃあやっぱり……。あの迷子になった時に色々相談されて…?」

 駅のホームに並んで彼を見上げた時、彼は「うーん」と首を捻ってみせた。

「相談されたってのはちょっと違うかな」

「え…」

「単純にさ。ママと喧嘩したから戻りたくないって言われた」

「そうなんだ……」

「うん。あの時は結構参ったよ。とりあえず颯太くんの気持ちを落ち着かせようと思って、どこか座れる所に移動しようとしたら迷子放送が流れちゃって……。はたから見たら俺が誘拐してるみたいでヒヤヒヤした」

「……あぁ」

 ーーそれは確かに、そうだろうな。
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