シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「ママ?」

 颯太は不思議そうに私の顔を覗き込んでいた。純粋なその瞳を見て、あの事を話すならきっと今しかないと思い立った。

「あのね、颯ちゃん」

 言いながら絵本をベッドの端に置く。

「いつかは颯ちゃんに話そうと思ってたんだけど……聞いてくれる? 本当のパパの話」

 颯太はハッとして息を飲み込んだ。

「……うん」

 深く頷く颯太の目に、迷いは無かった。

 今から六年に満たない過去を思い出し、私は颯太を身ごもった時の話をした。

 私より五つ年上の男の人と付き合っていて、その彼を愛していた事。

 お腹の中に颯太の命が宿って、それをきっかけに結婚を望んだけれど出来なかった事。

 それでも颯太を産みたくて、ひとり親になろうと決意した事。

 それら一つ一つを、言葉を選びながらゆっくりと話した。

 颯太は私の目を見ながら、時折り悲しそうな顔をしていた。それでも要所要所で頷き、ちゃんと理解しているのがありありと感じ取れた。

「ママはその人と、もうあってないの?」

「……うん。最後にお別れした日から、一度も連絡を取ってないよ。だから、ママが颯太を産んだ事……その人は知らないの」

「……そうなんだ」

 颯太は眉を下げ、何事かを考え込んでいた。

「ごめんね、パパが亡くなったなんて嘘をついて」

「ううん。いーの。だってジンくんが言ってたもん」

「え。ジンくんが? なんて?」
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