シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 鳴海くんの明るい白金の髪が、どういう訳か真っ黒に染まっていた。

「変かな? 一応ブルーブラックに染めてみたんだけど」

 言いながら彼がサラサラの髪に触る。

「……ブルー、ブラック?」

 聞き慣れないワードに私は首を傾げた。

「うん。日差しの下だと時々青く見えるでしょ?」

 確かに。ただの黒髪という訳ではなく、青く発色する事で透明感と軽さが出ている。以前より少し濃いめのカラーコンタクトも髪色も、彼の肌色とマッチしていて、何というか……もう一言で言ってお洒落だ。

「凄いね、鳴海くん。黒も似合ってるよ、カッコいい」

 彼の目を見つめて惚けていると、サッと彼の頬に赤みがさし、「電車乗り遅れるから行こう」と言って手を繋がれた。

 電車に揺られて暫く経ってから、私は何気なく尋ねてみた。

「ねぇ、何で急に染めたの? やっぱり就活?」

「うーん、それも有るけど」

 鳴海くんと手を繋ぎながら、私は彼の顔を覗き込んだ。

 ーーヤバいな。前の髪色も好きだったけど……これはこれで……なんか違う人みたいでドキドキする。

 時々電車の窓から光の線が差し込んできて、彼の魅力を際立たせる。

 鳴海くんと付き合ってもう半年近く経つけれど、私は初対面の時と同じく彼に見惚れていた。鳴海くんはチラリと私に視線を寄越し、「颯太くんのお誕生日が近いから」と言った。

「……え。お誕生日?」

 言われてすぐは意味が読み取れなかったのだが。鳴海くんは照れくさそうに空いた方の手で頭を触った。

「ほら、沙耶さんの家にお邪魔した時。こっちのが印象良いかなと思って」

 すなわち父に挨拶する事を真面目に考えてくれている、そう理解して込み上げる想いに胸を熱くした。

「ありがとう」と微笑んだ時。降りる駅名のアナウンスが流れ、電車は緩やかにホームへ滑り込んだ。

 ***

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