シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
 学生さんが天井を見上げ、私の思考を代言した。

 その時、初めて彼と正面から目が合った。ほとんど日焼けの無い肌で、女の子みたいに白い。男の子にしては珍しいなと思った。それだからこそ、今の明るい髪色がとても良く似合っている。

 二重まぶたの目にスッと通った鼻筋。両耳には赤い輪っかのピアス。美少年とまでは言わないが、いわゆるイケメンだ。吸い込まれそうなカラーコンタクトの瞳を否が応でも見つめてしまう。

「どう、します?」

「え?」

 これ、と言いたげに学生さんが天井を指差した。

「ああ……」

 こんな緊急時にうっかり見惚れていた自分が恥ずかしくなり、私は頬に手を当てた。

「ママ?」

 呼ばれてすぐに颯太へ視線を落とす。颯太は何が起こったのか分からずに首を傾げて私を見ていた。

 我が子の目線に合わせてしゃがみ、あのね、と話しかけた。

「エレベーター、ちょっとの間、お休みしてるみたい」

「え。そうなの?」

「うん。颯ちゃん、このままでママと一緒に頑張れる?」

 颯太はキョトンとしていたが、やがて「うん!」と返事をし、満面の笑みを浮かべた。

 過度に不安を与えてはいけないが、別に嬉しい状況でもないのに、それを説明出来ない自分に歯痒さが募った。

 ーー水分は……。颯太の分は、ある。おやつと、あと着替えも一着。

 でも、トイレはどうすれば良いかな?
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